若い女性の流出を防ぐために

地方再生のカギは、地方がその解決の糸口としてジェンダーギャップ解消に乗り出しています。伝統的な価値観が色濃く残り、女性に魅力的な仕事の少ないところが多くなっています。地方から若い女性が少なくなれば、男女の人口比は崩れて未婚率が高まり、人口減は加速してしまいます。若い男女の人口バランスが崩れると、未婚化が加速し、人口の再生産ができなくなり、地方が滅びてしまいます。若い女性の流出をどうすれば止められるのかにかかっています。地元企業や地域住民を巻き込んだ試行錯誤が始まっています。
日本の少子化は加速するばかりで、新型コロナウイルス禍で鈍った都市部への人口集中は再び加速する気配があり、人口減が深刻な地方は、若い女性の流出防止に目を向けています。女性に重くのし掛かる家庭責任、男女の賃金格差、非正規に偏る女性雇用の3つの観点から、地方は女性が生きにくい状況があります。
地方では長男が家を継ぐという家族規範も根強く、男性は進学などで市外に出ても親元へ帰ってきます。一方、女性は結婚すれば、嫁の振る舞いが求められ、そんな価値観を嫌う女性は戻ってきません。女性の就業支援だけでなく、男性は仕事、女性は家事・育児といった性別役割分担が女性に窮屈を強いています。地方におけるジェンダーギャップの解消に向けた意識改革が必要です。
判断をゆがめるバイアスの一つに生存者バイアスがあります。勝ち残った人の行動から勝ち筋を見極めようとする傾向です。一見すると正しい対処法のように思えますが、残れなかった人の敗因も探らないと、真に有効な対策は立てられません。地方のジェンダーギャップ問題は、生存者バイアスが生じやすくなっています。旧来の価値観を支持する人ほど地元に残り、その価値観は一層強固になります。ジェンダーギャップを過小評価しないように心掛けることが大切です。

(2023年12月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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