若年女性の妊娠-Ⅰ

若年妊娠の支援のあり方
わが国の出生数は年々減少し、2022年には80万人を割りました。全体数が減少していく中でも、母親が20歳未満の出生が占める割合は、ここ20年でさらに減少傾向にあります。全出生数のうち20歳未満の母からの出生数の割合は、2000年は1.7%でしたが、2022年には0.6%です。10代の妊婦本人の立場から見ると、元々少ない10代妊婦がますます少数派となり、同じような状況にある人や、相談しあうような仲間が周囲にいなくなっています。孤立しやすい環境がさらに加速していると考えられます。
若年妊娠は、医学的なリスクが低いと思う人も多いようですが、実は10代女性の体は未成熟で、骨盤も狭いため、流産、早産、死産、妊娠高血圧症候群などの周産期異常が起こりやすいのです。また同じ10代の妊娠でも、14歳と19歳ではリスクの高さが異なります。特に初潮から2年以内の妊娠はリスクが高くなり、慎重な医学的管理が必要です。しかし、本人たちはもちろん、その親も若年妊娠のこうした情報を知らないことがほとんどです。さらに10代の女性では月経不順のケースも多く、お腹が大きくなるまで本人が妊娠に気づかないこともしばしばあります。
支援するうえでやはり一番に大切にしたいことは、本人の希望です。未成年であっても、妊娠・出産はもちろん、赤ちゃんの養育についても、妊婦の親など保護者の意向だけで方針を決めるのではなく、本人の意思をくみ取りながら進めていくことが大切です。中高生の妊娠の場合、教育支援も重要です。妊娠したら学校を辞めなくてはならないと本人が思い込んでしまうことがありますが、そんなことはありません。そのためには、妊婦をいつも見守っていられる支援者、支援の中心的な役割を担うキーパーソンが不可欠です。それは家族かあるいは保健師さんかなど、ケースによって違いはあります。
学校は勉強だけではなく、友達や信頼できる先生などと人間関係を構築する場でもあります。また、現実に高校中退、中卒では職業の選択肢も限られます。就学が継続できるような支援が必要になります。支援の際に、若い母親のその先の人生を念頭に置くことが大切です。10代で出産した女性が、将来に夢や希望を持てるような支援が必要です。

(母子保健 2024年7月号)
(吉村 やすのり)

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