転職による増収

2022年の厚生労働省の雇用動向調査によれば、転職で賃金が上がる人は34.9%に対し、減った人は33.9%です。若年層ほど賃金は上がる傾向にあり、20代は40%を超しています。一方、50代以降は30%を下回り、中高年の転職では賃金が下がるリスクが高くなっています。
長期雇用や年功序列という日本型雇用は、一般的に退職金を含む生涯賃金や昇進の面で、同じ会社で働き続けることのメリットが大きくなっています。キャリアが見通しやすく、気心の知れた仲間と仕事を続けることは、生活の安定にもつながります。企業も、長期雇用を前提に人に投資をし、大胆な配置転換で会社の成長につなげてきました。
しかし、日本の賃金水準が長く低迷しています。企業が人に十分な自己啓発を行わない状況が継続しています。脱炭素やデジタル化で必要とされる労働者の能力が変化し、人生100年時代には、生涯を通じた能力の獲得が必要だとしてリスキリングの必要性を強調しています。職務給を広げて、成長産業への労働移動を円滑化させて、賃上げにつなげたい考えです。
リクルートによれば、今年4~6月に同社の転職サービスを使って転職を決めた人のうち、前職から賃金が1割以上上がった人の割合は35.0%で、過去最高を更新しています。IT系エンジニアは40.3%と際立って高く、営業職も35.2%、接客・販売・店長・コールセンターも38.4%です。しかし、米国や中国では転職で賃金が上がる人の割合は70%を超えており、日本は45%と国際的には低水準です。これまでの雇用の流動化では非正規が増え、賃金低下や雇用の不安定化を招いていました。今後は転職後に賃金が上がるかどうかを健全性の指標とし、労働市場改革を進めていく必要があります。

(2023年10月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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