通貨のデジタル化

現在のわが国のクレジットカードや電子マネーなどの決済比率は約40%です。コロナ禍で現金利用が減り、上昇傾向にありますが、国際的には高くありません。決済手数料が重荷となる小規模店などで広がっていません。紙幣や硬貨をデジタル化するデジタル円は、現金と同様に手数料がかからない可能性が高く、キャッシュレス化を加速させる契機となり得ます。

現金決済の維持には多額の費用がかかります。銀行のATMや小売店のレジなど2.8兆円に上るとの試算もあります。様々な面でデジタル化が進む中、決済だけ紙幣が残ると整合性が取れず、生産性も低くなるとされています。通貨の形は時代とともに変わってきており、デジタル円は進化と捉えるべきとする考えもあります。
将来的にキャッシュレス社会にシフトすべきだとの考えもありますが、デジタル円の導入時期は慎重に見極める必要があります。高齢者を中心にスマホなどに不慣れな人も少なくありません。海外に比べて治安が良く、偽札も少ない日本では現金を好む人が多くなっています。自宅で保管するタンス預金は、約60兆円との推計もあります。
通貨のデジタル化の意義としては、全ての人が取り残されずに金融サービスの恩恵を受けられる金融包摂が挙げられます。銀行の店舗が少ない途上国では、地方の住民が口座を持つのは難しいのですが、スマホを通じて貯蓄ができるようになります。紙幣に比べると、印刷のコストがかからず、発行や取引の集計でも負担が少なく、小さな自治体や市民団体も手がけやすい利点があります。

(2024年6月6日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)

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