長時間労働と賃金格差

急な残業や深夜対応もいとわないような働き方の存在が、企業上層部への女性の進出を阻んでいます。2022年の就業構造基本調査によれば、週50時間以上の長時間労働をする正社員の割合は、全世代で男性が高くなっています。管理職になりやすい30代後半~40代後半は、2倍の差が開いています。子育て世代の長時間労働は、子育てとの両立が難しく、昇進の差につながっています。
リクルートワークス研究所が2020年に発表した国際比較の調査によれば、同意なき残業、転勤、職務・役職変更のいずれも日本が上位にきます。雇用を保障する代わりに、残業などを求める日本型雇用の特徴が表れています。子育ての多くを担う女性は対応できず、賃金格差の要因になっています。男女の賃金格差は、高賃金ほど大きくなっています。上位10%の男女の賃金では、30%以上の差がみられています。女性が高収入の仕事に就けておらず、管理職になりにくい、なっても権限や賃金が少ない軽い役職についていると考えられます。OECDのデータでは、日本の男女の賃金格差は2割超で、先進国平均の2倍近くあります。
経済学賞を受賞したクラウディア・ゴールディン教授は、残業や休日出勤、夜間業務や急な呼び出しなどに対応できる人が多額の報酬を得ているとしています。子どもがいる場合、性別役割意識の下、主に女性がこうした仕事に対応できず、男性と賃金が開いてしまいます。Greedy work(強欲な仕事)が男女の賃金格差の核にあると指摘しています。ここに切り込まなければ、真の多様性やイノベーションは生まれません。柔軟な働き方の確保や生産性を重視した評価の見直しが急務です。

(2023年12月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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