高所得者の転職増

2023年度の経済財政白書によれば、転職について所得が低い層に限らず、高所得層で増える傾向にあります。2017年度と2022年度を比べると、年収が500万円以上の層で転職した比率が高まっています。特に年収900万円台で1.1%から1.9%に、1,250万~1,499万円で1.2%から2.2%となり、伸びが目立っています。一方で年収100万円台や200万円台は、2022年度に転職の比率が下がっています。2022年度にともに6%台と水準自体は高かったのですが、100万円台では1.3ポイントも低下しています。
人手不足を背景に専門性の高い職種の求人倍率が上昇しています。職種別では、ITや通信のエンジニア、企画・管理などが上がっています。年収ベースで500万~600万円台と、比較的高い賃金水準の求人が多くなっています。
年齢や学歴が近い非正規社員が転職したケースと転職しないケースを比べると、転職して正社員になった人は、非正規で転職しなかった人よりも賃金の伸び率が9.01ポイント高くなっています。正社員同士の比較でも、自発的に転職した人は転職しなかった人に比べて、年収の伸び率が2.26ポイント高くなっています。自発的に転職した人のうち、リスキリングなどの自己啓発を実施した人では、年収の押し上げ効果は5.45ポイントとさらに高くなっています。
労働者のリスキリング支援強化を労働移動の活性化と同時に行うことが、社会全体の構造的な賃上げ環境を構築する上で重要です。

(2023年9月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。