高額医療費の増加

健康保険組合の財政悪化の要因の一つに、高額医療の増加があります。技術革新が進み、がんや難病に効果がある画期的な新薬が相次ぎ開発されています。かつて不治の病とされた病気に治療法が出てきた一方で、医療費の高額化が進んでいます。
健康保険組合連合会は、高額な医療費が個々の健保組合の財政に及ぼす影響を和らげるため、高額医療が発生した健保組合に対し、すべての健保組合から集めた拠出金を交付する制度を設けています。規模の小さい健保組合で高度な診療報酬明細書が数件発生すれば、財政が急速に悪化して解散に追い込まれる恐れがあるためです。
健保連によると、2022年度に同制度に申請したレセプトのうち、1カ月の医療費が1,000万円以上の件数は、前年度比18%増の1,792件と過去最多でした。5年間で3倍強に増えています。レセプトの金額上位100位の疾患をみると、2022年度は悪性腫瘍が金額ベースで半分以上を占めています。高額ながん治療薬であるキムリアなどの保険適用が影響しています。
高額医療を巡る負担は、今のところ健保連全体でカバーできています。今後も保険適用される高額な医薬品が増えれば、健保連全体の財政を揺るがしかねません。高齢者医療への拠出金の増加に加え、健保組合運営における新たな悩みの種となっています。

(2024年4月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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