失業と賃金の関係

先進国では、失業率が下がっているのに、賃金がなかなか上がりません。国際通貨基金(IMF)の統計によれば、先進国の賃金は、2008年のリーマン・ショック前までは前年比3%台の伸びが続きました。それが危機の影響で1%台に落ちた後、2017年になっても1%台から抜け出せない状況です。
IMFによる最新の見通しでは、一方、先進国39カ国の失業率は、2018年に5.3%に下がる予想です。2007年の5.4%を下回り、データのある1980年以降で最も低くなります。これらの国ではモノやサービスの需要が戻り、先進国全体では10年ぶりに経済の需要が供給を上回るようになっています。それでも賃上げが鈍いのは、働き手の不足が経済の制約になり、成長への期待が下がっているためです。
人手不足の要因の一つに、労働参加率の低下があげられます。15歳以上のうち働く人と働く意欲のある人の比率を示し、高齢者が増えると下がりやすくなります。OECDによれば、主要7カ国は男性の参加率が2009年に70%を割り、2017年も67.6%にとどまっています。経済成長の持続には、労働生産性の向上が欠かせません。人手不足の低成長は、今後の先進国の政策課題です。

 

(2018年7月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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