わが国の租税負担率

消費税率が5年半ぶりに引き上げられ、10%になりました。1989年の消費税導入時には、政府は強い反発にさらされました。10%への引き上げを巡っても、政府は2回、景気の減速などを理由に延期し、軽減税率やポイント還元を導入することで、反発を和らげようとしました。わが国は、税への負担感、いわゆる租税抵抗が強いとされています。世界的に見ても、日本は低い租税負担率にしては痛税感が強い国です。日本の国民所得に占める租税負担率は25.1%で、OECD加盟の34カ国中5番目に低くなっています。一方、中所得の人が税負担が重いと答えた割合は61%であり、日本より租税負担率の高い北欧をはじめとする欧州諸国よりも高くなっています。
わが国の租税抵抗の強さは、社会の成り立ちとも深く関わっています。わが国には、西欧の市民革命のように民衆が自らの手で圧政を倒して政府をつくった経験がありません。戦後に近代的な税制を導入しても、私たちの政府という実感は持てないまま、税については、近代より前のお上による取り立てのイメージだけが残っています。
日本には公の意識が成熟していません。北欧では、地域の教会を中心にした教会税のように、仲間で支え合う関係が社会の基礎にあります。地域社会で互いに協力しながら、医療や教育、福祉などのサービスを分かち合います。こうした仲間意識の延長線上にある公の意識が、租税抵抗を和らげるためには欠かせません。日本では少子高齢化が進む一方、格差や貧困もあらわになっています。みんなで支え合って生きていこうという社会を作るための税であるという意識を持たなければいけません。

(2019年10月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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