子宮移植への道

日本医学会の検討委員会は、昨年の7月に子宮がない女性の出産可能にするための子宮移植の臨床研究の実施を容認しました。子宮がない女性は、子宮筋腫やがんで子宮を摘出した人も含め、国内に20~30代で推計5万~6万人いるとされています。子宮移植は、現状では健康な人からの生体移植となります。生体移植では腎臓や肝臓でも行われていますが、生命維持にかかわるこれらの臓器と異なり、子宮移植は妊娠・出産が目的となります。
子宮移植手術には熟練を要し、移植後も一年経過観察後、レシピエントに月経があることを確認し、凍結保存していた受精卵を子宮に戻します。拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤を使い続けなければなりません。移植後出産まで最短で約2年がかかりますが、出産が終了すれば子宮を摘出することになります。
脳死の人からの臓器提供が移植医療の基本ですが、臓器移植法は現在のところ、脳死の人からの子宮提供を認めていません。ただ、脳死の人からの子宮提供が認められたとしても、国内ではそもそも脳死のドナーは限られ、心臓などの提供を待っている患者が多くいるのが現状です。子宮提供のドナーと想定される20~50代女性となると、さらに数は限られてきます。このため、症例数を少数に限り、生体移植を認めています。
検討委員会はレシピエントの条件を、生まれつき子宮がないロキタンスキー症候群や、がん治療によって子宮を摘出した女性で、移植で出産できる可能性が高いおおむね40歳以下と定めています。現時点で、子宮移植を臨床研究として実施する計画を公表しているのは、慶應義塾大学病院のグループです。世界では2021年3月時点で16カ国で85例実施され、40例で出産しています。実施された85例のうち、生体移植は63例で、22例は脳死移植でした。

(2021年11月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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