性的マイノリティーへの支援

厚生労働省の2019年度に実施した従業員50人以上の企業に対して性的指向や性自認に配慮した取り組みを調査したところ、2,388社のうち実施していると答えたのは10.1%にとどまっています。実施する取り組みとして、従業員向けの研修が41.3%と多かったものの、通称名使用を認めるや自認する性別のトイレ利用を認めるなど、トランスジェンダーが必要とする取り組みを実施する企業は少数でした。
LGBTQ(性的少数者)の中で、Tにあたるトランスジェンダーは、心の性別と出生時の性別が一致していないため性別を巡る困難が多くなっています。性別変更を希望する場合、要件を満たすには、性別適合手術を受ける必要があります。入院と退院後の休養に1カ月間程度を要する上、経過が悪ければ再手術を受ける可能性もあります。そのため就職活動は難航を極めます。特別休暇などを導入している企業はごく少なく、性別適合手術を受けたいと伝えると採用に不利に働くこともあります。
日本の性同一性障害特例法は、性別変更の要件に生殖腺がないことを定めています。精巣や卵巣を摘出すると、生殖機能を完全に失うだけでなく、性ホルモンを分泌できなくなるため継続的なホルモン療法が必要となります。スペインは、2007年に法改正して手術要件をなくしました。2004年の英国の特例法も手術を求めていません。日本では、手術要件を見直す法改正の動きはまだありません。性別変更が容易ではないことを踏まえて、当事者から就学上・就業上の配慮を求められたら、学校や職場での適切な対応が必要になります。

(2022年11月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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