子どもの死因究明の必要性

子どもの死因究明は、1970年代に米国で始まり、英国でも2008年に立法化されるなど多くの国で広がりました。米国では、うつぶせ寝や添い寝で乳児が窒息死するのを防ぐ啓発キャンペーンにつながり、死亡を減少させました。日本でも子どもの不慮の死は後を絶ちません。厚生労働省の2022年の人口動態統計によれば、乳児の死因のうち不慮の事故が男児で4.6%、女児で3.7%を占めています。0~19歳までの全ての年代で、死因の上位3つに不慮の事故が含まれています。
国は、子どもの死因究明を強化しようと法整備を進めてきました。2019年施行の成育基本法では、国と地方自治体が、子どもの死亡に関する旨を明記しています。2020年に施行した死因究明等推進基本法の付則でも、施行3年をめどに死因究明の制度化を検討することが明記されました。
モデル事業を行う各県の検証の結果、子どもの外因死の最多を占めるのが自殺です。厚生労働省によると、2022年に自殺した小中高生は、514人と過去最多でした。子どもの死因究明は、子どもの最期の声に耳を傾け、遺族への支援についても議論を深める取り組みです。救えるはずの命が落とされないよう、社会で子どもを守る意識が必要です。

(2023年6月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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