医師の業務の移管

人工呼吸器の設定変更やカテーテルの抜去といった医療行為の一部を、医師以外の職種が担うタスクシフト(業務の移管)が広がってきています。来年4月から始まる医師の働き方改革の柱の一つで、医師の労働時間を減らすための取り組みです。医師の時間外労働に上限が設けられることで、医療の水準が落ちないようにチームで支えることが求められています。
診察前に患者に病歴・症状を聞く行為や、書類の下書きなどの業務は、医師以外の職種にも任せられます。看護師には研修を受けることで、より高度な技術を患者に提供できる枠組みが始まっており、研修を修了した特定看護師が担える特定行為は、21区分38行為にわたっています。診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師に対しては、2021年の法改正によって検査時の造影剤の注入、消化器検査時の検体採取などが可能となっています。
厚生労働省研究班の報告によれば、特定看護師3人を148床の2次救急病院の消化器外科に配置した際、1週間あたりの医師の平均指示回数が692回から200回に減ったとされています。また、高度な医療を担う500床以上の特定機能病院では、心臓血管外科に特定看護師2人を配置後、医師の年間平均労働時間が2390.7時間から1944.9時間に減少しています。
病院のトップの考え方や医師の充足度によって、タスクシフト推進の度合いは異なります。医師の人手不足感の強い病院・診療科を中心に、移管を拡大させているところが多くなっています。タスクシフトをためらう理由として、多くの病院がマニュアル作成や教育研修にかかる負担が大きいことを挙げています。しかし、医師と他職種では労務単価に差があることから、研修費用は一定期間で回収できると思われます。

(2023年8月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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