原発処理水の海洋放出の風評被害

東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出が始まりました。地元魚介類への風評被害の懸念が高まる中、販売を支える輪が広がっています。原発事故を巡る風評被害は、歳月の経過とともに収まってきています。消費者庁の1月の調査によれば、放射線物質を理由に福島県産食品の購入をためらう割合は5.8%です。2013年2月の調査開始以降で最小となっています。
処理水にはトリチウムが含まれています。国際原子力機関(IAEA)は、海水と混ぜて国の安全基準の40分の1未満に濃度を薄める日本の放出計画を、国際的な安全基準に合致していると評価しています。しかし、韓国や中国などでは安全性を懸念する声が根強く、中国は日本産水産物の全面禁輸を決めています。
処理水の海洋放出に伴い、福島県産の海産物は風評被害に苦しんでいます。風評被害を抑えるにはトリチウムの量を速やかに測定し、可視化することが大切です。茨城大学は魚介類に含まれる放射性物質を迅速に測定し可視化する手法を開発しています。一方で自治体などが食品に含まれる放射性物質を検査していることを知らない割合は63.0%に達しています。安全性確保に向けた取り組みの認知度は低いままです。
日本の食品には厳格な安全対策が講じられており、科学的な安全性が担保されています。安心して今までの購買行動を続けることが必要です。

(2023年8月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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