体験格差の世代連鎖

文部科学省の委託調査で、6~12歳の体験活動の有無が、6年後の子ども自身にどう影響しているのか調べています。キャンプなどの自然体験は、自己肯定感や社会性などと、美術鑑賞などの文化的体験では、これらに加え興味関心や思いやりなどとも正の関連があることが分かっています。AIが活躍する社会での人間の強みは、感性や気づく力です。AIを使いこなすためには、様々なものに目を向け、自分なりに考えることが大切です。そういった力は、多様な経験を積む中で育まれます。
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査によれば、音楽やスポーツ、美術鑑賞などの体験活動に参加していない子どもの保護者もまた、幼少期にそうした経験が少ないとされています。世代間で体験格差が連鎖しています。
世帯年収で比べると、年収300万円未満の家庭の子どもは、3人に1人が直近1年で体験活動を何もしていませんでした。年収600万円以上の世帯では、約10人に1人でした。低所得世帯の中でも、親の経験の有無で大きな差がみられています。世帯年収300万円未満で、保護者が小学生の頃に体験活動をしていなかった家庭では、直近1年以内に体験活動がなかった子どもの割合は58.1%に上っています。保護者に体験活動の経験があった家庭では、17.4%にとどまっています。小学生の頃に体験活動をしていない保護者の割合は、年収が高くなるほど少なくなっています。

 

(2023年8月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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