企業内弁護士の増加

国内企業で働く弁護士は2023年に初めて3,000人を超え、この10年で3倍になっています弁護士全体の約1割が、企業内弁護士になっています。さらに法務部門の役割が広がり、弁護士に法律知識だけでなく、ビジネススキルも求める企業が増えています。弁護士にあえて法務以外の部署を経験させる取り組みもみられるようになってきています。
採用企業も1,429社と前年比4%増えています。採用する企業も多岐にわたるようになっています。20年前は採用企業の多くが、日本IBMやゴールドマン・サックス証券など外資系企業でした。徐々に日本企業でも弁護士を採用する動きが広がり、現在ではヤフー、三井住友信託銀行など日系企業が採用数上位を占めています。大手だけでなく、スタートアップや中小企業が、初の法務担当者として雇うケースも目立ってきています。
人数の増加と採用企業の多様化により、企業で働く弁護士に求められる能力も変化しつつあります。元々は、契約書のチェックや訴訟実務に関する業務が中心で、法律の専門家としての実務力が求められていました。一部の企業では、弁護士資格を持たない法務部員を減らし、弁護士に置き換えようとする動きもみられました。
近年、各社で法務担当部署が関与する分野が拡大しています。社内弁護士にも、自社のビジネスへの深い理解が必要になる場面が増えてきています。海外企業を対象としたM&A(合併・買収)が増加し、複数国の法令知識と国際的なビジネス感覚に基づいた判断が求められるようになっています。ビジネスと人権の問題への取り組みやコンプライアンス対応も必要になります。
企業の法務機能への期待が高まり、それに伴い弁護士を含む法務人材への引き合いは強まっています。リーガル部門に加え、政策渉外や個人情報保護など、企業の中で法的素養が必要になる部門が急増したことが一因です。社内弁護士は売り手市場で、待遇を上げないと確保できない状況になっています。実際に社内弁護士の年収はこの10年で大幅に上がっています。

 

(2023年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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