HPVワクチンの認知度の低さ

厚生労働省の調査によれば、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンについて、接種対象者の28%がワクチンを知らないと答えています。国内で子宮頸がんで亡くなる人は年約2,900人にも達しています。若くして亡くなったり、治療で子宮を摘出したりすることもあります。HPVワクチンは、小学6年から高校1年相当の女性を対象に2013年4月に定期接種化されました。
しかし、接種後に体の痛みなど多様な症状を訴える人が相次ぎ、厚生労働省は同年6月に積極的勧奨を中止してしまいました。その後、多様な症状とワクチンとの関連を示す研究結果は確認されていないとして、2022年4月に勧奨が再開されました。積極的勧奨が中断していた期間に、接種が受けられなかった1997~2006年度生まれの対象者は、公費でのキャッチアップ接種を受けることができます。
HPVワクチンについて、対象者本人の28%、保護者の9%が知らない(聞いたことがない)と回答しています。積極的勧奨の再開を知らない対象者は53%、保護者は23%にのぼっています。キャッチアップ接種についても、知っていると答えたのは対象者の19%で、53%が知らないとしています。これまでは3回接種でしたが、今年4月からは、15歳になるまでに初回を接種すれば、半年後の2回目接種で済む9価ワクチンが定期接種に加わっています。
スウェーデンのチームが2006~2017年に10~30歳の約167万人を調べた研究では、接種した人の子宮頸がんの発生率は、接種しなかった人に比べ63%低くなります。16歳までに接種した人では88%低く、17~30歳では53%低くなっています。既に性交渉の経験があっても、まだ感染していない種類のHPVの型への感染を防ぐ効果が期待できます。
HPVワクチンの子宮頸がんの予防効果については、多くのエビデンスが蓄積されてきており、一人でも多くの女性の接種が望まれます。これまで厚生労働省はリーフレットの配布やSNSなどを通じた情報発信を実施してきておりますが、効果がみられておりません。ワクチンを含む子宮頸がん予防の重要性について認知度を上げるため、政府公報などを通じたより積極的な情報発信を強化する必要があります。

(2023年9月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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