企業における社外取締役の必要性

社外取締役は、業務執行を担わない、経営陣の親族でないといった条件を満たす取締役です。会社法で規定され、2021年の改正で上場会社での設置が義務付けられています。社内から独立した客観的な立場から、株主の利益を守るよう求められます。社長指名や役員報酬の決定をはじめ、取締役会の監督機能の重要な担い手として、期待される役割は重くなっています。
コーポレートガバナンス・コードは、2021年の改訂で東証プライム市場の上場企業に取締役会の3分の1以上を社外取締役にするよう求めています。社外取締役の起用が一気に進み、基準を満たす企業は、2020年の59%から2023年は95%に達しています。
多くの機関投資家は、女性取締役がいない企業にはトップ再任に反対する議決権の行使基準を設けています。政府も、プライム上場企業に、女性役員比率を2030年には30%以上とする目標を示しています。女性マネジメント層の手薄な日本企業は、社外の人材に頼るケースが多くなっています。
そのため、社外取締役の兼任が増えてきています。今夏時点で東京証券取引所の上場企業で2社以上を兼任する社外役員は2022年から4割拡大しています。とりわけ女性役員の兼任比率が高くなっています。女性の社外役員で兼務をしているのは740人で、全体2,432人の30%が兼務している計算で、男性の同15%を大きく上回っています。3社以上の兼任者だと、女性は246人で全体の10.1%を占め、男性の同3.5%の約3倍の比率です。
女性で兼任者の顔ぶれを見ると、目立つのは弁護士や会計士、大学教授などの経歴です。経営経験のある人材は多くありません。女性役員の人材が限られる主要因として、企業で女性の幹部登用が進まないことがあります。このため限られた経営経験のある女性経営人材に役員就任のオファーが集中してしまいます。

 

(2023年9月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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