アルツハイマー病を知る―Ⅲ

新薬レカネマブの効果
レカネマブは、日本の製薬大手エーザイと米製薬企業バイオジェンが開発しました。患者の脳神経細胞のまわりに蓄積する異常なたんぱく質であるアミロイドβを除去し、アルツハイマー病の進行を遅らせる世界初の薬です。レカネマブは、アミロイドβの中で最も毒性が強いとされる小さな塊に標的を絞り、早期の患者に対する有効性を示しています。



しかし、レカネマブは、悪化した脳の機能を回復させて病気を完全に治す根治薬ではありません。進行した症状は元に戻らないため、患者や家族が効果を実感するのは難しい可能性が高いとされています。副作用もあります。治験では、投与した患者の12.6%に脳の腫れ、17.3%に脳の微小な出血が見られています。定期的に脳画像検査を受け、異常が確認されたら投薬の中断が必要になる場合があります。特に、遺伝子のタイプアポE4を持つ人は、副作用が出やすいことが分かっています。日本人患者の10%前後が該当するとみられ、慎重な使用が求められています。
患者の脳では、タウというたんぱく質も神経細胞の内側に蓄積し、それが病気の進行の最大の原因ではないかとする研究もあり、タウの蓄積を防ぐ薬の治験も実施されています。これとは別に、老化抑制や脳神経細胞の再生によって病気を治す研究も始まっています。

(2023年9月18日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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