小型ロボットによる体内治療

ドイツのマックス・プランク知能システム研究所などは、丸まって体内を動く小型ロボットを開発し、動物の胃の出血を止められることを確認しています。小型ロボットによる治療が実現すれば、患者の負担を軽くしながら、手術が困難ながんを切除するなど、治療の選択肢が広がる可能性があります。小型ロボットは長さ2㎝、幅1㎝、厚さは僅か0.2㎜です。体外から低周波の磁場をかけると、ロボットは丸まって転がります。口から胃、小腸や大腸に至る消化器内を自在に移動できる可能性があります。
手術が難しい肺にある細長い気管支の中を治療するために、英リーズ大学は磁気で制御するシリコン製の細長いロボットを開発しています。ミミズのような形状で、直径は僅か2㎜、長さは約8㎝です。肺の奥にある最も小さな気管支の一部にも届きます。気管支鏡と呼ばれる気管や気管支を観察する肺カメラの先端から、肺の奥の細い管に向かってロボットを放出します。

20世紀に入ると、大きく開腹せずに手術できる内視鏡が開発され、21世紀には医師による手術を支援するロボットが普及し、治療の効果と安全性を高めてきました。小型ロボットが体内を巡って治療できる日が来れば、手術台に上がって麻酔をかけたり、じっとしたりする手術の概念そのものが変わるかもしれません。

(2023年10月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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