乳がん再発のリスクの数値化

乳がんの再発リスクを数値化する遺伝子検査が保険適用されました。オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムは、再発に関わる21の遺伝子を調べます。手術で切除したがん組織の一部を米国に送ると、3週間で結果が分かります。切除手術後に抗がん剤の投与を受けるかどうか判断する基準になります。
再発リスクを0~100のスコアで示します。高いほど手術後9年以内に再発する可能性が大きくなります。26以上は特にリスクが高いとされ、抗がん剤の投与が推奨されます。25以下は抗がん剤の効果は低く、原則として投与する必要性は低いとされています。抗がん剤は副作用を伴い、費用もかかります。不必要な投与を避けられるようになれば、患者の生活の質(QOL)の向上につながります。日本では自由診療で使用されてきており、全額自己負担で約45万円かかっていました。保険適用で、3割自己負担の患者なら自己負担は13万円程度ですみます。

乳がんは大きく4つに分類でき、オンコタイプDXが適用されるのは、乳がん患者の約7割を占めるHER2陰性、ホルモン受容体陽性というタイプです。このタイプの乳がんでは、手術後に再発を防ぐためにホルモン療法を実施します。患者によっては抗がん剤を併用します。抗がん剤は、抜け毛や吐き気、免疫力の低下といった副作用を伴います。

乳がんは、日本の女性の9人に1人が罹るとされています。ホルモン陽性の早期乳がん患者はのうち、抗がん剤が本当に必要な人は約25%で、残る75%は必要ありません。不要な抗がん剤投与を避けるために、オンコタイプDXは積極的に臨床現場に取り入れてきました。治療の後に長く続く人生があり、QOLを保つことも視野に入れる必要があります。

(2023年12月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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