医師の時間外労働

来年の4月より医師の働き方改革が始まるため、医師の時間外労働の取り扱いが問題となっています。一般的に労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。国も、上司の指示によって業務をすれば労働だという考えを示しています。これまで医師の時間外の行為のどこまでが業務で、どこまでが自己研鑽かは、大きな問題になりませんでした。多くの病院が、医師は長時間労働をしている前提で、労働時間を正確に把握しようとしてこなかったからです。
医師の働き方改革によって、時間外労働には、原則年960時間(月80時間)の上限ができます。医師は病院に遅くまで残ることも多いのですが、全ての時間外労働としてカウントすれば、すぐに上限を超えてしまいます。厚生労働省も病院も医師に上限を守らせたいので、基準を作ることによって、できるだけ時間労働から自己研鑽の時間を除いています。
医師の場合、時間外勤務を自己研鑽とするのが労働として扱うのかの明確な基準を決めることは困難です。業務を広く自己研鑽として扱うことで、見た目の労働時間は減っても、実態は今まで通りの長時間労働をしていることになります。まず、働き方改革を実施後の実態調査が必要となります。
医師が労働者としての意識を高めることが大切です。若い医師たちは、月の時間外労働が200時間を超えることも少なくありません。大学病院で専門医資格や博士号さえ取得できれば辞める人も増えているようです。このままでは、重症患者を診ることができる医師がいなくなってしまいます。国民にも我がこととして、医師の声に耳を傾けることが大切です。

(2023年12月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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