脳死移植1,000例超

1997年臓器移植法施行により10年が経過し、脳死移植が1,000例を超えました。脳死移植への理解は、確実に進み移植も増えましたが、心停止を含む臓器提供者数が、海外より圧倒的に少ない状況は変わりません。臓器提供体制が整った病院がまだ限られているのに加え、患者や家族に死後の臓器提供を選択肢として示さない病院が多いことが影響しています。国民の理解は広がりましたが、提供者の実数はまだ低水準です。日本の2021年時点の脳死と心停止を合わせた提供者数は、人口100万人あたり0.62人にとどまっています。40人を超える米国や、韓国の8.56人と比べても差は歴然です。
脳死移植が思うように増えない理由の一つに病院側の体制の問題があります。脳死提供できる医療機関が大学病院など900施設に限られ、実際に体制を整えているのはさらにその半数にとどまっています。提供した実績のある病院は、2022年3月時点で176施設のみです。
脳死判定には、複数の医師やスタッフが対処する必要があります。家族への対応を含め、臓器提供までに病院側の負担が大きく、二の足を踏むことになります。脳死移植が実現したケースを調べると、医療従事者が患者の家族に臓器提供を選択肢として示した場合が、8割ほどを占めています。家族から自発的に申し出る例は極めて少ないにもかかわらず、選択肢を示すことをためらう病院が目立ちます。
米国や韓国などの場合、医療機関が脳死の可能性が高い患者の情報を、臓器提供の斡旋機関に報告する取り組みが導入されています。専門のコーディネーターが家族に臓器提供の情報を提供し、希望に応じて移植につなげています。日本でも同じような制度はありますが、コーディネーターは不足しています。

(2023年12月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。