転職による年収の増加

リクルートエージェントによる調査によれば、2023年に転職した人のうち35.0%が賃金が1割以上高まっています。およそ3人に1人が、転職で年収が増えた計算です。職種別にみるとITエンジニアへの転職で賃金が高まる場合が多く、人事や経営企画といった事務系専門職や営業職でも割合は過去最多でした。人手不足を背景に幅広い業種で転職者の賃金が上昇しています。
日本は、欧米に比べればまだ賃金増の伴う転職者は少なく、キャリアアップ型の転職が多くありません。転職時に役職が上がった割合を調べたところ、日本は11カ国で最も少なく、社内昇進が中心の日本企業と、ステップアップのために他社に移る米欧との違いは明らかです。
総務省の労働力調査によれば、ほかの仕事に変わりたいなどと考え、転職を希望している人は、2023年に1,000万人を超えています。働く人の7人に1人が転職予備軍です。他方、実際に過去1年間に転職した人は328万人にとどまっています。自分の能力が生かせる場はこの組織の外にあるはずだと思う人は多いものの、実際に行動に踏み出す人はそこまで多くないのが現状です。日本経済は歴史的な人手不足の局面にありますが、経済成長を促す労働市場の流動化にはなお様々な制約があると思われます。

(2024年5月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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