iPS医薬品の国内初の承認申請

大阪大学発新興のクオリプスが、iPS細胞由来の心筋シートを厚生労働省に薬事申請します。iPS細胞の商用開発では、日本勢は海外勢に後れをとってきました。iPS細胞由来の医薬品は世界で開発が進んでいますが、承認申請は初めてで、認められれば実用化で日本が先行することになります。
iPS細胞は、2006年に京都大学の山中伸弥教授が世界に先駆けてマウスから作製に成功し、2007年にヒトのiPS細胞の作製にも成功しました。2014年に再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療新法)が施行され、研究開発が本格化し、理化学研究所らのチームが網膜疾患に対して世界初の移植を実施しました。しかし、厚生労働省は、がん化のリスクなど安全性の観点から実用化に向けた開発には慎重で、日本では大学主導の研究が中心です。
医薬品としての開発では、患者自身の細胞を使う自家と呼ばれる手法と、健康な第三者の細胞からつくる他家と呼ばれる2つの方法があります。自家は拒絶反応を抑えられる一方で、採取から医薬品としての製品化まで時間がかかります。他家は大量に複製してストックできる利点がありますが、拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤などが必要となります。
日本では、京都大学と住友ファーマがパーキンソン病に対する治験を進めるほか、慶應義塾大学発スタートアップなども治験を開始しますが、実用化には時間がかかります。クオリプスの製品が承認されれば、日本の再生医療にとっても起死回生となるかもしれません。

 

(2024年5月26日 日本経済新聞) (2024年5月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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