出産に対する保険適用

かつて地方では家族や近隣の人、産婆らが出産対応を担うことも多く、医師の処置と混在していたことなどから、全国一律での保険診療の導入が困難でした。正常分娩は病気ではないとして、現在も公的保険が適用されていません。保険診療ではなく、自由診療なので、価格は分娩施設がそれぞれ設定しています。
帝王切開や吸引分娩などの異常分娩は、法律上は病気の扱いとなり保険適用がされ、費用は全国一律で国が設定しています。異常分娩の場合、処置にかかる費用や入院料などが保険適用され、自己負担は3割です。
産婦の経済負担を軽減するため、1994年10月に、出産育児一時金が創設されました。それまでは、ひと月あたりの給与額に応じて分娩費などが支給されていました。1994年当時の一時金は30万円です。当時の国立病院の平均分娩料26万4千円、産前産後の健診費用2万7千円に、育児の初期費用を加えた額として設定されました。その後何度か増額され、昨年4月には42万円から50万円に増えました。
一時金は、産婦が加入する公的医療保険から、産婦に対して払われます。2009年10月からは、直接支払制度が導入され、保険者から直接分娩施設に一時金が支払われるようになり、産婦が出産直後にいったん全額を支払う必要がなくなりました。同時に産科医療補償制度が始まりました。出産時の事故で新生児が重度の脳性麻痺になった場合に、産婦に総額3千万円を支給する制度です。

(2024年7月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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