日本企業の新陳代謝

国税庁の法人番号サイトのデータによれば、新規登記数は2021年から伸びが鮮明となり、2023年は、14万2,659件と前年比で8.9%増え、2016年以降で最多となっています。コロナ後の経済の回復に政策の後押しが加わったことによります。政府は、2022年にスタートアップ10万社の創出を掲げて支援を強化し、新興企業への投資を促す税優遇措置を2023年度から拡大しました。日本政策金融公庫は、2024年度から創業支援の無担保・無保証融資の限度額を増やしました。



デジタル化の進展など環境の変化もあります。オンライン会議の普及などによって地方で開業するハードルが下がりました。2023年に秋田県や岩手県の前年比の増加率は、東京都や大阪府と並んで2桁に達しています。社会保障を整える動きも進んでいます。スタートアップで働く人を対象とする初の健康保険組合が発足しています。従来の中小向けよりも保険料率が低く、企業の負担も軽くなります。
起業が活発になるのと同時に、市場から退出する企業も多くなってきています。法人の登記閉鎖は2023年に4万3,187件と前年比14.5%増えています。倒産は、2021年度に57年ぶりに6千件を下回っていましたが、2023年度は9千件を超えました。危機対応の命綱だった無利子・無担保のゼロゼロ融資の返済が、本格的に始まったためです。開業10年未満の企業の存続数に対する倒産数の比率は、30年以上の老舗の6倍です。新興は数だけでなく質の担保も課題になります。

G7の中で、開業が活発な国は実質成長率も高い傾向にあります。過去5年の開業率が10%近い米国は、平均成長率が2%に達しています。日本は開業率が4.4%で平均0.1%のマイナス成長でした。競争による企業淘汰は、市場メカニズムの健全性の表れです。

(2024年6月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。