大学授業料の費用負担を考える

日本私立大学団体連合会によれば、税金から国立大学の学生1人あたりに229万円が投じられているのに対して、私立大学は18万円に過ぎません。学生100人あたりの教職員数では、国立大学は31.9人に対し、私立大学は19.5人です。授業料では、私立大学の平均は約96万円で、国立大学の1.8倍となっています。私立大学は収入の大半を授業料など学納金に頼っています。

国立大学の授業料は、国私格差の是正を理由に、値上げされてきた歴史があります。授業料の格差が5.1倍だった1975年以降、国立大学の授業料は断続的に引き上げられてきました。国立大学の授業料が現行の標準額となった2005年度以降は、値上げに踏み切った国立大学は、東京工業大学など7校にとどまっています。私立大学の平均授業料は上がり続けており、標準額との差が再び広がりつつあります。
東京大学が2021年に行った調査によれば、学生の4割が年収1,050万円以上の家庭出身者でした。幼い頃からの塾通いなど教育投資が可能な家庭出身の学生が、国立大学には多いとして受益者負担を求める声もあります。国際競争に負けない大学教育を提供するために、授業料を上げることは一つの選択肢です。高収入の世帯には応分の負担をしてもらい、所得の低い世帯には給付型奨学金で手厚くサポートする在り方も考えるべきだと思います。
文部科学省の推計によれば、2040年の大学入学者は約51万人で、現在の総定員を10万人以上下回ることになります。人口減少社会を支える高等教育の費用負担をどうするか、社会全体での議論が必要です。大学教育の質を維持向上していくためには、個人や社会の負担をどうしていくかを考えなければなりません。

(2024年7月18日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。