ES細胞で肝細胞移植

国立成育医療研究センターは、重い肝臓病の赤ちゃんに胚性幹細胞(ES細胞)からつくった肝臓の細胞を移植する治療法を、2023年度中に国に再生医療等製品として承認申請するとしています。ES細胞を用いた治療法としては国内初です。
ES細胞は、体の様々な細胞に分化する多能性幹細胞の一つで、受精卵由来の胚細胞からつくります。体の機能を回復させる再生医療への応用が期待されています。2019年から、生まれつき肝臓の病気で体内の有毒なアンモニアを分解できない尿素サイクル異常症の赤ちゃんを対象に臨床試験を進めてきました。ES細胞からつくった肝臓の細胞をへその緒の血管から挿入したカテーテルを通して肝臓内の血管に投与して移植します。これまでに5人に投与し、大きな問題は確認されていません。
尿素サイクル異常症は、8,000人から4万4,000人に1人の頻度で発症します。血中のアンモニアの量が高まってしまい、嘔吐や痙攣、意識障害などが起き、命に関わることもあります。通常はたんぱく質の摂取量制限や薬などで治療しますが、治療していても重篤な症状を抑えられないこともあります。
根本的な治療は、肝臓の移植です。しかし、生後すぐの赤ちゃんに移植すると死亡につながる合併症のリスクが高いため、体重が6㎏程度になる生後3~5カ月までは移植が難しいとされています。この大きさに育つまでの橋渡しとしてES細胞からつくった肝細胞を移植する治療法が期待されてきました。

 

(2023年10月24日 日本経済新聞・東京新聞)
(吉村 やすのり)

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