HIV感染者の妊娠・出産

 HIV感染男性の精液中にはHIVウイルスが存在します。精液からウイルスを除き、精子だけを取り出す処置を受け、体外受精や顕微授精をすれば、妻への感染の可能性をほぼゼロにできます。最近では、HIV感染男性のほとんど80%以上は、HIVに対する化学療法の結果血中ウイルスが6ヵ月以上測定感度以下となっています。これらの症例では、1回の性交でHIV水平感染が起きる確率は10万分の1以下と計算されており、このような症例には医師がタイミングを取って数か月の間、自然性交による妊娠を薦める考え方も出てきています。
 母親から赤ちゃんへの母子感染も、母体のウイルス量が少ないほど確率が下がります。ウイルス量が多くても、母親が抗HIV薬を使うことで感染を防げる可能性があります。適切な予防策を取れば、母子感染の割合は1%未満に抑えられます。HIV感染判明後に妊娠した女性の割合は、2006~2010年の約56%から、2011~2015年には約75%に増えています。しかし、妊娠後の検査で初めて感染がわかる例は減ってきています。

(2018年2月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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