Well-beingの認知の必要性

Well-beingとは、肉体的、精神的、そして社会的に完全にみたされた状態を言います。心身の健康のみならず、感情として幸せを感じたり、社会的に良好な状態を維持していることを意味します。人材こそ競争力の源泉と考える人的資本経営が企業に根付きつつある中、人材価値向上に直結する概念として注目を集めているのが、個人の生きがいや幸福感を意味するウェルビーイングです。
日本経済新聞は、企業に勤める一人ひとりのウェルビーイング実感を測定し、可視化するためのアンケート調査を初めて実施しています。直近3~6カ月でどの程度ウェルビーイングを実感できているかという質問に対しては、10点満点で7点以上をつけた回答者の割合をウェルビーイング実感が高い人に分類しています。その結果、20代の45.8%に対し30代の36.1%、40代の30%、50代の29.9%と、年を重ねるほど幸福感を実感している人の割合は低下しています。企業内で責任は増すが、自分自身でキャリア形成しているといった実感に乏しいと思われます。しかも家庭では子どもの教育負担などが重くなる時期で、中間管理職のフラストレーションを反映しているのかもしれません。60代で41.7%と回復するのは、社内競争から解放され、子どもなども自立して、経済的自由度が増すことが背景にありそうです。
ウェルビーイングという言葉を知っていますかという質問については、聞いたことがあり、意味も知っていると答えた人の55%は、直近3~6カ月のウェルビーイング実感でも7点以上をつけています。一方で、聞いたことがないと回答した人で、ウェルビーイング実感が高かったのは20%に過ぎませんでした。会社が働き甲斐などに配慮し、関連施策をしっかり説明している企業の従業員は、当然ながらウェルビーイングへのコンシャスネス(認知度)が高く、結果として幸福感も高い傾向がみられます。これをウェルビーイング・コンシャス・プレミアムと呼びます。
経営者が日頃からウェルビーイングの重要性について語っていれば、社員は会社が自分たちの働き甲斐や幸福感について真剣に考えていることを知り、自分でも自らのウェルビーイングを高める方法を模索することになります。また、企業なので業績目標の数字を定めることは必要です。この数字を達成すれば我々はこんな幸せをつかめるのではという提示の仕方をすれば、社員のウェルビーイングにも寄与すると思われます。経営者と社員が対話して、幸せに向けたナラティブ(物語)を紡ぐような関係を築けるかがカギとなります。

 

(2023年12月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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