がんゲノム医療の高い壁

 がんに関係する遺伝子(ゲノム)の変化を網羅的に調べ、それぞれに合った治療薬を探すがんゲノム医療が広がってきています。検査が保険診療になって7年が経ち、受けた患者は12万人を超えました。

 がん遺伝子パネル検査は、2019年に保険適用になりました。費用は56万円で、患者負担はその人の負担割合などによって異なります。体制整備が進み、全国約300の施設で受けられるようになりました。データ集積も進み、薬の開発に生かされています。検査を受けた半数弱に治療薬が提案されますが、実際に治療にたどり着くのは8~9%とされています。がんの種類によっても違いがあり、患者が多く薬剤開発が進んでいる肺がんなどでは高い一方で、膵がんや肝臓がんは低い傾向がみられます。

 がん遺伝子パネル検査を保険診療で行うには、固形がんでは標準治療終了見込みの患者が主な対象となっており、既に容体が悪化していて治療が受けられない人もいます。パネル検査では、他のがんで承認されている薬が有効な可能性があるとして提案されることがしばしばあります。適応外使用と呼ばれますが、保険診療では使えないために治療に用いるハードルは高く、有効性の検証が進んでいないことも多くなっています。

 日本癌治療学会などは、現状では主に標準治療終了見込みに限定されている検査実施のタイミングについて、制限をなくし適切な時期に実施できるようにすることを提案しています。薬へのアクセスを改善していく必要性も指摘しています。米国では、適応外使用となる薬を使うかは現場の医師の判断にゆだねられるなど、がん患者が必要な薬を使えるよう迅速で柔軟な運用がなされています。

(2026年5月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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