ビジネスから教育、戦争まで、AIはあらゆる分野で欠かせない存在になっています。AIは、技術革新にとどまらず世界の権力構造も変える可能性があり、AIを支配する企業や国家に莫大なデータ、知識、資本が吸い上げられ、植民地化が進みかねない状況にあります。
米国製AIに依存した結果、やがて代替がきかなくなり、米国企業への交渉力を失っていく危険性があります。AIには、三つのリスクがあります。第一に海外のAIに依存すれば、外国企業に利用料を支払い続けることになります。利用国側から見れば、国富が長期的に流出しかねない状況です。日本のデジタル関連のサービス収支は、2023年に約5.5兆円の赤字になっています。
第二のリスクは、価値のある情報やデータが長期にわたって国外に流れ出てしまう点です。生成AIなどを使うと、入力した情報だけでなく、いつ、どのように使ったかといった記録も多くの場合、AI企業に蓄えられていきます。企業側は情報を市場の分析や新サービスの開発に生かせます。第三のリスクとしては、他国のAI企業に依存すれば、その国の政府による介入を受ける危険もぬぐい切れないことになります。最悪のシナリオでは、紛争や戦争の危険が高まった際、特定の国・地域へのAIサービスを止めるよう、米政府が米企業に求めることもあり得ます。
欧州ではAI植民地化を避けようと、対米依存に歯止めをかけようとする動きが出てきています。クラウドからソフトウェア、AIまでを、欧州内で開発・調達するユーロスタック構想はその象徴です。一方、日本ではそうした発想や戦略は欧州ほどみられていません。
米中対立が深まる中、中国は米国製のAIの排除を進め、独自の基盤づくりを急いでいます。世界シェアでは米国に遠く及びませんが、AIモデルの質では距離を縮めています。米同盟国である日欧は中国とは前提条件が全く異なります。米国製AIを排除するのではなく、日欧で協力して新たな道を探る必要があります。

(2026年4月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





