わが国における臓器提供の現状

 臓器移植とは、病気や事故で臓器の機能が弱くなった患者に他の人の臓器を移植することです。親族など健康なドナーからの生体移植と、脳死や心臓が止まった人からの移植の二つに分けられます。二つある腎臓や再生能力のある肝臓などは生体移植ができます。心臓が止まった後では、腎臓、膵臓、眼球などです。脳死ではこれに加えて、心臓、肺、肝臓、小腸も提供できます。

 臓器移植法が1997年に施行され、脳死になったドナーから臓器を移植できるようになりました。2010年に改正法が施行され、ドナー本人の意思が不明でも、家族の承諾があれば提供が可能になりました。金銭などと引き換えに臓器を提供したり、提供を受けたりする臓器売買やあっせんを禁じています。脳死や心停止後の移植やあっせんをする業者には、国の許可が必要と定めています。

 カンボジアでの臓器移植をあっせんし、その対価を患者から受け取ったとして、患者支援団体の関係者ら3人が逮捕されました。事件の背景の一つには、日本国内でのドナー不足があります。わが国の脳死と心停止後を合わせた臓器提供者は、2025年は158人です。海外と比べると少なく、2024年の人口100万人あたりの提供者数を見ると、日本は1.13人です。最も多いスペインは53.93人です。生体移植は、腎臓が年1,750件ほど、肝臓が350件ほど行われています。健康な人の体にメスを入れる倫理的な問題やドナーのリスクもあり、あくまで例外的な医療との位置づけですが、腎臓では生体移植が9割近くを占めています。

 日本臓器移植ネットワークによれば、平均的な待機期間は、心臓は約3年半、肝臓は約1年、肺は約2年半です。待機者が多い腎臓移植は約15年と長期化しています。待機期間が長引くなどし、海外で移植を受ける人もいます。2008年に国際移植学会で採択されたイスタンブール宣言では、臓器売買や海外に渡航し、金銭を払って臓器提供を受ける移植ツーリズムの禁止を提言しています。

(2026年7月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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