高次脳機能障害とは、脳卒中などの脳血管疾患や事故などで頭を打って脳を損傷することで起きます。新しいことが覚えられない記憶障害、集中力が続かない注意障害、ものごとを計画・実行できない遂行機能障害、感情のコントロールができない社会的行動障害といった症状があります。言葉を理解したり表現したりできない失語や、疲れやすいといった症状もあります。
わが国では、約23万人と推計されています。しかし、身体障害がなく外見からはわからない人も少なくないとされ、見えない障害とも言われています。東京都の調査によれば、原因の8割は脳卒中、1割が交通事故などの外傷による脳損傷です。そのほかに、低酸素脳症や脳炎、脳症、脳腫瘍なども原因になります。
日本の医療現場ではこれまで注目されてきませんでした。戦後、車社会の急速な進展とともに1970年代には交通事故の死者数がピークになりました。1980年頃までは、脳血管疾患が日本人の死因の1位を占めていました。医療技術が進んで助かる命が増え、後遺症に直面する人や家族が増える中、支援の必要性が注目され始めました。
国は2001年に支援モデル事業を始め、2004年に診断基準ができました。身体障害がなくても精神障害者保健福祉手帳が取得できるようになり、障害者雇用枠での就労も可能になりました。しかし、障害の特性が理解されず、甘えや怠け、人格が変わったなどとみられ、苦しんでいる当事者や家族が今もいます。社会がこの障害を理解することが求められています。

(2026年7月6日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)





