人口減社会を救う遠隔医療

 高齢化と人口減少が加速する2040年代に向け、国民の医療アクセスを確保するには、遠隔医療の発展と最大限の活用が必須となります。5月20日、日暮里や蒲田など首都圏19のJR東日本駅構内で個室ブースを使ったオンライン診療が始まりました。オンライン診療ブースは地方圏での医療アクセス確保にも役立ちそうです。

 人口減で都市や集落の人口密度が低下すると、患者の減少で医療機関の収益が悪化し、やがて存続できなくなります。自治体病院など採算よりも医療サービスの維持を重視している医療機関でも、医師や看護師ら医療従事者を確保できずに、診療科の閉鎖や縮小、閉院に追い込まれる例が相次いでいます。医師らの残業を抑える働き方改革の観点からも、今後は医療機能を集約する流れが強まります。日本では新型コロナウイルス感染症後、2020年からオンライン診療を認める範囲が順次広げられています。

 オンライン診療は、育児と仕事の両立に苦労する親の負担も軽減します。学校や保育所で子どもが体調を崩した際に、保健室を拠点に遠隔の親も交えて医師の診察を受ける態勢ができれば、子どもを迎えに行くために親が早退するケースを減らすことができます。高度医療の領域でも遠隔医療の技術は進歩しています。専門医が遠隔地のロボットを操作して患者を手術する遠隔手術の社会実装に向けた検討が始まっています。

 限られた医療資源と労働力を有効利用するためにも、オンライン診療を最大限活用する環境づくりが必要です。遠隔医療は医療機関の競争環境を一変させるため、既得権者の抵抗や反発が少なくありません。日本の人口は今後15年で1千万人規模で減り、そんな配慮を許さないほど医療の環境は厳しくなります。

(2026年6月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です