女性の閉経前後10年間を更年期と呼びます。厚生労働省の2022年の意識調査によれば、日常生活に支障が出る更年期障害の可能性があると考える人の割合が50代女性で38.3%、40代女性は28.3%に上っています。中年女性に様々な不調が現れる更年期障害は、働き盛りの時期とも重なり、QOLに大きな影響を与えます。ホルモンを補充するなど治療選択肢は広がってきましたが、受診控えがいまだに多いのが問題となっています。
厚生労働省意識調査でも、受診しない最も多い理由は医療機関に行くほどのことではないと思うからで、40代で69.4%、50代で70.2%です。更年期に入る前にほしい情報については、主な更年期症状の内容や程度、主な更年期症状に対する対処法、医療機関を受診する目安と回答した人の割合が40代・50代で高くなっています。
日本女性医学学会の2025年指針では、ホルモン補充療法(HRT)を閉経後の女性のヘルスケアに活用することを合目的かつ有効な手段として推奨しています。更年期症状の早期からHRTを始めることが健康寿命を延ばすことにつながります。後期では、ホルモン低下の影響で病気のリスクも高まるため、更年期症状を契機に医療とつながっておくことが大切です。
更年期症状は、仕事やプライベートに大きな影響を及ぼします。経済産業省は、女性特有の健康課題による経済損失は年間約3.4兆円にのぼると試算しています。中でも更年期症状による損失は約1.9兆円と突出し、うち離職による損失が最大の要因となっています。国立成育医療研究センターの調査によれば、母親の更年期症状が強いほど、思春期の子ども自身も孤独感・不安・抑うつやインターネット依存の傾向が高く、メンタルヘルスが悪化する傾向があるとされています。

(2026年9月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)







