国民に痛みを伴う税制改革を
消費税は、現役世代が主に払う所得税や社会保険料と違い、高齢者を含めた幅広い世代が消費に応じて幅広く負担します。景気変動の影響を受けにくいため、社会保障のお金を安定して確保してきました。だからこそ歴代の政権は有権者から反発があっても、税率を3%から5%、8%、10%へと小刻みに引き上げてきました。
2年間、食料品に限るとは言え、実質ゼロの減税規模は年5兆円に及びます。医療、年金、介護、子育てなど社会保障給付費を賄う二大財源は、働く現役世代が主に負担する社会保険料と、幅広い国民が負担する消費税です。今年2月の衆院選では、主要政党が軒並み消費税の減税や廃止を掲げていました。与野党の視野が、今だけ、ここだけ、自分だけに狭まっています。
高齢化がピークに近づく2040年に向け、医療や介護の必要度が高い層が増える一方、働き手の中心となる15~64歳の生産年齢人口は減っていきます。現金給付や減税で手取りを増やしても、サービスを支える体制や人材、財源の見通しを踏まえなければ、責任ある決断と言えません。
2012年の社会保障と税の一体改革は、与野党が立場を超えて社会保障の安定財源を消費税に求めることで合意し、税率10%への引き上げにつなげました。安心できる社会保障の維持には、国民が負担を分かち合う必要があります。社会保障サービスによる受益と負担を一体で議論し、負担分が自分にも還元されると国民に納得してもらうことが必要です。選挙のたびに噴出する減税・廃止論に流されないために、社会保障と税の一体改革の再建が急務です。国民に痛みを伴う税制改革が今こそ必要になります。

(2026年7月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)





