OECD加盟国の6割で、首都圏への人口集中が和らいできています。住宅価格の高騰やリモートワークの浸透が背景にあるとみられます。37カ国の平均値は2021年の16.9%をピークに下降に転じ、ドイツやノルウェーなど24カ国で集中が緩和しています。フランスは2023年の首都圏人口が前年比7,000人増で、増加数は10年前の7分の1です。
一般に人や企業は集積が集積を呼びます。インフラの共有による税負担の軽減や取引コストの低下、交流によるイノベーションの創出など、集積の経済が働くためです。一方で、集中が行き過ぎると交通渋滞による生産性の低下や、住宅コストの増加による消費の抑制などを招きます。住宅費の高さが都市部を離れる動機になっています。
OECDによれば、過去10年間で住民数が150万人以上の都市圏では住宅価格が約68%上昇しました。上昇率は25万~150万人の都市圏の50%や10万~25万人の都市圏の37%より高く、中間層でも手が届かない水準になっています。新型コロナウイルス禍も影響しました。行動抑制の影響で都心の就業機会が減ったほか、リモートワークが普及しました。
中央集権の傾向が強い日本では様相が異なっています。首都圏への人口集中度は右肩上がりで、2030年には27.6%に高まる見通しです。韓国でも2023年の集中度が43.3%と、2010年の42.1%から上昇しています。首都圏を選ぶ背景には、高い所得への期待もあります。東京と異なる産業が集積する拠点を育てることは、既存の産業が競争力を失った際のリスク分散になります。自然災害リスクでの対応を含め、一極集中の解消には合理性があります。

(2026年8月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





