科学論文の安全保障上のリスク

 技術流出や軍事転用など安全保障上で問題が生じる恐れのある海外の組織と共同執筆した科学論文が増えています。日本経済新聞の分析によれば、国内主要100の大学・研究所の2025年の共著論文数は、約7,200本と10年前に比べて倍増しています。

 懸念組織とは、国の安全保障や経済にリスクをもたらす恐れがある企業、大学、研究機関のことを指します。兵器や原子力といった軍民両用につながる研究を手掛ける組織が多く、研究者を介して自国の研究技術が流出する可能性があります。日本や米国など各国政府が、特定の懸念に基づいてリストを作成しています。

 東京大学や理化学研究所など論文数が多い国内上位100機関の状況を調べたところ、2025年は7,270本で2024年比11%増と、10年前と比べると2倍になっています。機関が発表した論文の約7%に相当します。共著論文数で上位を占めたのは、研究力が高いとされる国立大学でした。2025年は東京大学が1,769本で一番多く、10年で2.8倍に増えています。英オックスフォード大学(1,743本、10年で2.9倍)など海外の一流大学に匹敵しています。

 懸念組織が所属する国別にみると、9割強が中国でした。分野別では材料科学や化学と日本が強みを持つテーマが多くなっています。共著論文が急増したのは、中国の研究力が世界的に評価されるようになったことが背景にあります。国際交流や技術流出対策は昔に比べて格段に厳しくしており、さらに強化する必要があります。

(2026年8月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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