高齢化による在宅医療の増加を受け、調剤薬局のあり方が変わりつつあります。福岡発のスタートアップは、薬剤師が患者の元へ薬を届けるサービスに特化し、首都圏でも店舗を拡大する訪問調剤が増えています。人口減少と高齢化を受け、医療機関へ行って薬をもらう外来患者が減っているためです。医療機関の近くに出店している門前薬局には逆風で、経営の見直しを迫られています。訪問調剤は、薬局と契約する患者の元を薬剤師が訪ねるサービスで、介護保険を受けている高齢者の利用が多くなっています。
厚生労働省によれば、在宅患者数は2040年に1日あたり10万9,000人と2025年比23%増える見込みです。うち72%を85歳以上が占めています。訪問調剤サービスの需要の高まりは必至です。全国に6万店超ある薬局の4割で、一定の在宅対応が可能となっています。実際に患者を訪問する店舗の36%は、常勤薬剤師が3人以下の体制です。厚生労働省は、欠勤時などに人員を確保できず、患者の要請に応じられないリスクがあるとしています。
訪問調剤の収入は、通常の薬局よりも高くなっています。在宅医療に関する処方箋1枚あたりの医療費は約2万円と、全処方箋平均の2倍です。主な患者である高齢者は飲む薬が多いためです。6種類以上になると弊害が生じやすくなるとされ、薬剤師による管理の必要性は高くなっています。日本保険薬局協会の調査によれば、薬剤師が個人宅を1件訪問するのに98分かかります。移動や医師、患者とのやり取りの時間も多く、外来対応の7倍超に相当します。認知症や終末期の患者もいるため、担当する薬剤師の精神的な負担もあります。

(2026年9月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)







