2000年以降、回復傾向にあった先進国の出生率は、2010~2015年頃から一斉に低下に転じました。現在はすでに回復期前の最低値を大きく割り込み、史上最低の水準に下がっています。こうした傾向は、ほぼ全てのOECD加盟国、に共通して広範にみられています。
2000年前後からの出生率回復は高所得国でみられた傾向でしたが、その他のグループも少し遅れて2000年代後半から下落率が鈍化しています。しかしどのグループでもその後再び下落率が高くなっています。ここ十数年の出生率低下圧力はより広い世界に共通した傾向と言えます。日本の出生率は、ここ四半世紀ほどはOECD加盟国の平均的な動向をなぞっていますが、その水準がOECD平均よりも下に位置したままです。
日本の出生率は、体質改善がうまくいったとしてもこれから大きく改善する可能性は低いと考えられます。少子化を前提とした社会への転換は、いまや少子化対策の本命であると言えます。主な課題は高齢化・労働力不足、そして地域間格差であり、これらの問題は重なり合っています。移民は、高度専門職を含む様々な領域で経済活動を支える不可欠な労働力になっており、高所得国において移民はもはや欠かせない存在となっています。
移民の送り出し国は、かつては人口が増えているアジアなどの高出生率国であったのですが、現在では様相が異なってきています。東欧には、出生率の低下による人口減少の同時並行で進む人口流出に悩む国も出てきています。こうなると少子化は、抜けられない悪循環のトラップとして作動し続けることになります。同様の人口問題は、国レベルに限ったものではなく、日本の地方でも起こっています。出生数の低下と若年層の県外流出に苦しむ地方は増加しています。
人口の悪循環トラップに悩まされる国や地域に共通するのは、地元で職にあぶれた若者が他地域に転出するのではなく、むしろ高い教育を受けた若者がより良い生活機会を求めて都市部や豊かな国に移住することです。日本は、国レベルではまだ受け入れ国です。人口移動は今のところあくまで国内問題です。しかし日本の所得水準は、既に先進国の中ではかなり低くなっています。他方で学力の面では依然としてOECDでも上位です。他国の高所得に引き付けられた高学歴人口の海外流出は現在では目立ちませんが、日本でもその兆しは見えてきています。
(2026年4月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)







