AI依存の副作用

 米シカゴ大学の研究チームは、1980~2025年に投稿された約4,130万本の論文について、医学や物理学などの6分野の論文のタイトルと要旨を解析し、生成AIや古典的な機械学習の技術を研究で使用したか推定しています。AIを使った論文は、扱う研究分野の範囲が従来より4.6%狭く、異分野の科学者と一緒に研究に取り組む頻度も22%少なくなっています。科学の研究がたこつぼ化しています。

 人気の研究分野に科学者が集まれば、その他の領域で研究が遅れる恐れが出てきます。歴史を振り返ると、幅広い分野での意外な発見が科学の進歩を生んできました。AIの活用に頼り過ぎて研究の裾野が狭まれば、予想外の進歩が鈍るかもしれません。

 シカゴ大学などによれば、AIを使う科学者は発表する論文の数が3倍多く、昇進も早くなっています。研究にAIを取り入れる動きは、今後も増えそうです。しかし、未知の分野からデータを集めるなどして、科学の裾野を広げる必要があります。

 人類は、鋭い発想や豊かな想像力を駆使して国や社会の仕組みを作り、科学技術を進歩させてきました。しかし、AIは、自らが学習した内容を超える新たな知恵を生み出さないという意見もあります。AIが普及した現在、人間に求められるのは、社会で必要な科学の知見を見極める目や相手の気持ちを汲み取る感性なのかもしれません。

(2026年5月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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