がん光免疫療法の開発

光免疫療法と呼ぶがんの新しい治療が年内にも、世界に先駆けて日本で始まります。手術や放射線、抗がん剤では十分な効果が得られず、再発したがんなどへの効果が期待されています。光免疫療法は、がん細胞に結合する抗体医薬とレーザー光を組み合わせ、がん細胞をピンポイントで破壊する治療法です。早ければ年内にも一般の患者の治療が始まる見通しです。全身に広がったがんは難しいのですが、局所的に増大したがんがほぼ消失するなどの効果を示すことがあります。
対象となる病気は、顔や首の周りなど頭頸部にできるがんのうち、局所で進行したり再発したりして手術で切除できない症例です。頭頸部がんは、喫煙や飲酒が原因となりやすく、国内の新規患者数は年2万人を超えています。容姿や発声に影響する部位のため、手術で除去できても他の治療を選ぶ患者もいます。進行した症例には、放射線と抗がん剤を組み合わせる治療や体の免疫機能を生かすがん免疫薬などの選択肢があります。しかしただ進行した状態では、治療しても約半数は再発します。
この治療では、まずがん細胞の表面の特定のたんぱく質にくっつく抗体医薬と、光に反応する分子を結合させた点滴薬を患者に投与します。24時間ほどかけてがん細胞に薬を集めた後、体の外からレーザーで患部に熱を伴わない赤色光を当てます。光と反応した薬の分子が変化し、がん細胞を破壊します。免疫療法といっても、体の免疫機構を使った治療ではありません。
がんが深い場所にあったりサイズが大きかったりする場合は全身麻酔をして治療します。がんに何本か針を刺し、光ファイバーを挿入して光を当てます。1回の照射時間は5分、治療全体が2時間以内に終わります。入院での治療が前提となります。同じ患者を繰り返し治療できることも強みです。1回の治療にかかる医療費は約600万円です。高額療養費制度を使うことで、患者の負担額は数十万円以下で済む見通しです。

(2020年11月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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