わが国の人材誘致の遅れ

先進諸国が高度人材の誘致にしのぎを削っていますが、わが国では受け入れ環境の整備で遅れが目立っています。消極的な移民政策に加え、見劣りする賃金や寛容性に乏しい社会など課題は多く、移民政策を見直さなければ、生産性の向上はおぼつかない状況にあります。急速に進む少子化の中で、対策が急務です。
OECDの人材誘致指数を参考に、優れた人材の呼び込みに関連する6つの指標について先進34カ国を比べています。日本は治安・安全性のスコアが高いのですが、残る5つの指標はいずれも先進国平均を下回っています。実質賃金、移民受け入れ政策、社会の寛容性などが軒並み低くなっています。2020年の日本の実質賃金は平均3万8,000ドルと、最も高い米国の56%の水準です。物価は安いのですが、報酬面で他国に見劣りし、高度人材の獲得には不利に働いています。
移民統合政策指数によれば、日本は一部途上国も含めた56カ国の中で35位です。日本の移民受け入れ政策は、永住権や医療制度など有利な面がある一方、教育や政治参加に大きな障害があるとしています。移民に対する差別撤廃のための法律や組織も持たないことが指摘されています。社会の寛容性も低く、国の政策だけでなく、国民の意識も移民受け入れの観点からは課題が残ります。
人材誘致で上位だったスウェーデンは、税金の高さがハードルとなる一方、日本とは対照的に、移民政策や社会の寛容性のスコアが高くなっています。米国は治安や安全性は低いのですが、賃金や外国人の就業率が高く、経済的なメリットを高度人材に訴求しています。日本としては、欧米にない独自の移民政策を考える必要があります。

 

(2022年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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