アトピー性皮膚炎の新薬

アトピー性皮膚炎は、慢性化するとなかなか症状がよくなりません。1年前、かゆみとそのもとになる皮膚の炎症反応を抑えるバイオ医薬品が登場しました。新薬であるデュピクセントは、体の中の免疫にかかわるたんぱく質(抗体)を使ったバイオ医薬品です。マウスで作った抗体を注射し、免疫細胞の一種であるTh2細胞が生み出すインターロイキン(IL)4とIL13という2つのたんぱく質の働きを抑え、かゆみやかゆみを増幅させる炎症反応を和らげます。現在の薬価は、1回の投与で8万1,640円です。単純計算すると年間で約210万円になります。もちろん公的医療保険でカバーされるため、自己負担はその一部ですが、高額な金額を毎回、病院の会計で支払わなければなりません。
アトピー性皮膚炎が、どのようなメカニズムで発症し慢性化していくのかはよく分かっていません。外からの異物(アレルゲン)の侵入を防ぐ皮膚のバリアー機能が弱く、皮膚炎を起こしやすくなっています。かゆみに耐えられなくなって掻くと、皮膚が傷つき、アレルゲンへの炎症反応も増してしまいます。こうした痒みの悪循環を、デュピクセントは断ち切ります。デュピクセントはよく効きますが、基本的には対処療法に過ぎません。アトピー性皮膚炎の治療では、皮膚の良い状態をいかに保つかが大切な点に変わりはありません。洗顔や入浴の後、保湿剤による徹底したスキンケアは欠かせません。

(2019年5月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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