アンコンシャス・バイアスの解放

知らずと偏った見方をしてしまうアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)は、これまで男性の上司などによる女性に対する偏見ととらえられてきましたが、女性自身にも自らの活躍を阻む思い込みが潜んでいます。内閣府が2021年度に実施した性別による無意識の思い込みの調査によれば、男性は仕事をして家計を支えるべきだと答えた女性は47%に上っています。育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきではない、家事・育児は女性がすべきだという女性も2~3割います。男女間での役割分業意識は女性の中にも根強いものがあります。
アンコンシャス・バイアスは相手だけでなく、自分に対するものもあります。過去の経験や見聞きしたことによって影響を受け培われるもので、自己防衛本能によっても生まれます。自分に対するアンコンシャス・バイアスは、自分の可能性を狭めてしまいます。困難を伴う挑戦はしないほうが居心地は良いかもしれません。しかし、思考や行動を変えると、見える世界も変わり未来も変わります。
日本の社会は空気で醸成されています。女性に関する概念を覆すのはとても大変です。法律や制度が変わり、少しずつ女性が社会で活躍しやすいように改善していますが、破壊的なイノベーションは起こせていません。進学率や就業率をみても変わってきていますが、意識の変革が遅れています。女性は家のことをきっちりやらないと働いてはいけないというプレッシャーをいまだに感じている人がいます。高度な専門職の女性でも、夫に仕事で全力投球をさせようと思い込む人もいます。
他の考え方や生き方に触れ、周囲の人と課題をシェアすることが大切です。女性自身が自分で壁を乗り越える自助努力のみならず、組織や意思決定者の意識の変化も不可欠です。アンコンシャス・バイアスを可視化して、自ら発信することも必要になります。

(2022年10月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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