コロナ禍での出生数の減少

子どもが生まれる数が世界で急減しています。新型コロナウイルスで経済状況や将来への不安が広がったとみられ、コロナ禍の影響が測れる昨年12月から今年1月、多くの国で出生数は10~20%落ち込んでいます。欧州で最初にコロナ感染拡大の中心地となったイタリアでは、2020年12月の出生数が前年同月比で22%減っています。スペインやフランスは、2021年1月の出生数がそれぞれ20%減、13%減です。フランスは1975年以来の減少幅です。
香港の1月の出生数は前年同月比56%減、台湾は同23%減っています。韓国は同6.3%減で、アジアも出生数減が広がっています。日本の少子化も一層進んでいます。1月の出生数は前年同月比14%減の6万3,742人です。2021年全体では、例年比で10%弱減る可能性があります。日本の妊婦の9割以上が届け出る妊娠届の件数も、2020年1~10月は前年同月比で5.1%減となっています。
人口維持のためには、2.06~2.07程度が必要とされています。日本では2005年に過去最低の1.26を記録した後は、いったん緩やかな回復傾向にありましたが、2019年は1.36と前年比0.06ポイント低下しました。先進国を中心に合計特殊出生率は低下基調にあります。1960年代までは主要国で2以上を確保していましたが、1970~80年代にかけて急低下しました。保育関連政策を手厚くしたフランスなど1990年代以降に回復した国もあります。少子化が続くといずれ人口減少に至ります。経済力の低下につながるほか、人口増加を前提としてきた社会保障制度の持続可能性が危うくなってしまいます。

 

(2021年4月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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