コロナ禍での少子化の加速

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う将来不安などから、想定を超えるペースで少子化が進みつつあります。厚生労働省によれば、出生数は今年1~10月の速報値が73万3,907人で、前年同期より約1万7,000人減っています。年間の出生数は昨年の86万5,239人を下回り、過去最少となる見通しです。2019年の令和婚の増加により、2020年は出生率の低下はみられないと予想されていました。

わが国における出産件数は、婚姻件数と強く結びついています。今年1~10月の婚姻件数の速報値は42万4,343件で、前年同期より約6万5,000件減少しています。さらに1~10月の妊娠届が、前年同期より5.1%減ったことから、2021年の出生数が80万人を下回ると推計されています。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計人口では、2033年とされていた80万人割れが、12年早く現実のものとなってしまいます。出生数の減少は、感染症への不安よりも、若い世代が経済的に不安を抱えていることが大きいとされています。若い世代は非正規雇用の割合が高く、雇用が不安定なのに加え、コロナ禍で大きな打撃を受けている飲食業や観光業で働く人が多いことが影響を与えています。在宅勤務やオンライン授業などで交流が減り、結婚が減少することが懸念されています。
少子化の加速で、日本の人口減少のペースが早まり、1億人を割り込む時期が、社人研が想定していた2053年よりも4年早い2049年になると予測されています。少子化で将来の現役世代が減れば、年金や医療、介護など社会保障の制度設計に大きな影響を与えます。現在は65歳以上の高齢者1人を、15~64歳の現役世代2人が支えている状態ですが、さらに少ない人数で支えることになります。
日本人は、結婚するにあたって経済的安定を重視するため、男性の雇用が不安定になると、女性は不安がって交際や結婚を考えにくくなってしまいます。若い世代を経済的に安定させることが、少子化対策には重要です。

(2020年12月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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