コロナ禍での高齢者の受診控え

コロナ禍で、感染で重症化のおそれがある高齢者は外出を避け、病院通いを控えています。身体機能の回復を図るリハビリテーションや認知症治療を受けた患者は、コロナ前に比べ2~3割減っています。身体の衰えや認知症は放置すると、健康で暮らせる期間を短くなり、健康寿命が短縮します。
運動器リハビリの受診者は、コロナ前に比べて27%減少しています。認知症の主な4つの治療薬いずれかを処方された患者は22%減少し、老化が発症の一因とされる白内障の65歳以上の患者も22%減っています。コロナが重症化しやすい高齢者は、外出自粛要請を機に外出や活動を減らしています。ニッセイ基礎研究所の調査によれば、コロナ下で対面でのコミュニケーションが減ったと答えた65歳以上は52%と、20~64歳の39%を大きく上回っています。
高齢者は体を動かす機会が減ると身体機能が衰えるフレイル(虚弱)状態に陥る可能性もあります。フレイルを放置すれば、要介護認定者が増え、医療費・介護費が増えることになります。2020年度の国全体の医療費は、前年度比3%減と過去最大の減少幅となっています。高齢者中心に受診控えが起きたためです。受診や利用控えは、健康寿命を短くするリスクがあるだけでなく、その後の医療費や介護対策費の増加にもつながります。高齢者の適切な受診やリハビリのサービス利用を促す施策が不可欠です。

(2022年3月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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